もっと「水」のことを知りたい!vol.2
~お料理の際に知っておきたい、おいしさを引き出す水の秘密~

アクアソムリエ 山中亜希さん
第2回目は、料理をしながらふと頭に浮かぶ不安や疑問を解決します。みなさんは料理をもっとおいしくするための水の選び方があることをご存知でしょうか。家族全員が毎日食べるものだから、もっとおいしく! もっと安全に!
今回は水に関する専門家アクアソムリエの山中亜希さんが、毎日の料理や飲み物と水の相性をご紹介します。素材によって水を上手に使い分けていきましょう。
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水から考える「食育」
手軽に扱える粉末だしなどの化学調味料の登場により、素材から出る本物の「うま味」を知らない子どもたちが増えています。子ども時代に培った味覚は一生モノ。子どもの将来の健康のため、水を通じて毎日の食の大事さを考えてみましょう。
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おいしい水でおいしいだしを
普段、忙しいママさんの時短料理に欠かせない、便利な粉末だし。手軽に味が決まるのが粉末だしの魅力ですが、塩分の量や添加物が気になるところです。そこで休日は、時間をかけておいしい水を使った無添加のだしづくりをしてみませんか?
本来のだしが魚、昆布、シイタケ、お肉などからつくられていることを知らない子どもたちが増えています。水からだしをとることは、「自分が食べている料理が本当は何からできているか」ということを知る、良いきっかけになるはずです。そんなことを話しながら、ゆったりと休日の夕飯を囲んでみましょう。子どもと一緒になって素材の違いによって出るだしの特徴を知ったり、味を比べてみたりするのも楽しいかもしれません。
基本的には、かつおぶし、昆布、いりこなどでだしをとるときには、軟水を使ったほうがまろやかな優しい味わいの、つまり日本人好みのだしがとれると言われています。日本の水は水道水を含め、ほとんどが軟水であることを第1回目「子育てママが知っておきたい水の種類とその特徴」で学びました。そのまま水道水でだしを抽出しても良いのですが、素材のうま味をさらに引き出すためには、カルキ臭などがないきれいな水を使用したいところです。

うま味はゆっくりと水に溶け込む
例えば、干しシイタケは時間をかけてゆっくり水(ぬるま湯)にひたして戻しますが、その間に水道水に含まれている塩素などの雑味が、だしの風味に影響を与える恐れも。。それを防ぐため、浄水器や軟水のミネラルウォーターなどの水を使って、じっくりとだしを抽出した方が良いのです。
また、野菜をコトコトと煮てだしをとるような場合にも軟水が合うようです。軟水なら野菜の味わいを損なうことなくおいしいスープが仕上がります。一方、硬水は硬めの肉を煮込んだときにアクが出やすくなったり、野菜の煮崩れを防いでくれるというメリットが。肉を煮込んでつくるスープストック(西洋だし)をつくる場合は、エビアンなど中程度の硬水の方がうま味をいっそう引き出してくれます。
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ふっくらごはんをおいしい軟水で炊き上げる

研ぐ段階からキレイなお水で
「ふっくらごはん」を炊き上げるためには軟水という要素が欠かせません。普段乾燥保存をしているおコメは、はじめて触れた水を1番多く吸収します。水道水は殺菌のために塩素が入っており、おコメのビタミンなどが失われてしまいます。主食であるおコメは家族全員がもっとも多く食べる食材ですから、研ぐ段階から「きれいでおいしい水」を使用したいものです。
では硬水でおコメを炊くとどうなるのでしょう? 炊けないことはありませんが、少しごはんに芯が残ってしまいます。この状態をイタリア語でアルデンテと呼びます。料理によっては芯が残るくらいの硬さの方が適しているということもありますので、たとえばピラフやリゾットなどのように仕上がりがべチャッとしてほしくないコメ料理の場合には、少し硬度の高い水を使った方がおいしく仕上がります。
パスタを茹でるときは硬水がおすすめ
また、パスタは硬水で茹でると、表面にあまり粘りのない状態で茹で上がります。軟水だと、少し表面に粘りが出て麺が互いにくっついたりしますね。肉じゃがも、軟水でつくるとじゃがいもが少し柔らかくなり、とろっとした仕上がりになりますが、硬水でつくると煮崩れがなくシャキッとした形が残ります。好みによって、使い分けるといいでしょう。
和食が軟水の影響を受けて発達してきたように、料理はそれが作られる土地の水の影響を大きく受けています。その料理が生まれた国の水や、その水に成分が似ている水を使うことで本場の味に近づくことができます。同じ料理でも、使う水によっていつもと違う食感になるので、なんだか料理の腕がワンランクアップしたような気持ちになりますね。
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コーヒーや紅茶をおいしく淹れるには
コーヒー、紅茶、日本茶を淹れる際は軟水がおススメです。ここでも普通の水道水ではなく、コーヒーやお茶の味に影響を与えない、浄水した水や軟水のミネラルウォーターを選ぶことをおすすめします。水道水は10分以上煮沸させることで塩素を薄めることができますが、煮沸時間が短いと発がん性物質であるトリハロメタンの生成量が逆に増えてしまいます(参考文献:ポケット図解最新水の雑学がよ~くわかる本 第2版/杉山 美次著/秀和システム)。毎日のように飲むことを考えると、コーヒーやお茶には安心でおいしい水を選びたいですね。

硬水でコーヒーを淹れると苦味が強くなる
ただ、これらは嗜好品なので、当然のことながら味の好みも人それぞれです。硬水を使うことで酸味や香りの出方が変わったり、コクが変化したり、どのバランスをおいしく感じるかは自分で確かめていくしかありません。
使う水によって味わいが大きく変わるということを知った上で、いろいろな水を試してみる……そんなことをご家族や友人と楽しんでみると、日常にワクワクをもたらしてくれそうです。
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水と料理が体をつくる
使用する水が料理にどんな影響を与えるのか少しお分かり頂けたでしょうか? 家族の健康のため、子供の将来の健康な体や正しい味覚を育てるためにも、水というのは料理に欠かせない素材の一つです。毎日、料理や素材にこだわるのは難しいと思いますが、まずは普段使っている水道水を、浄水器に通した水に変えることから始めてみるのもいいかもしれません。
次回は1日の中で水を摂るべきタイミングについてお話します。
監修:山中 亜希さん

山中亜希先生 プロフィール
2004年にイタリアにて日本人初のアクアソムリエの資格を取得。2008年4月よりミネラルウォーター専門スクール「AQUADEMIA」を開校し、校長に就任する。ミネラルウォーターの正しい知識や情報の普及のために、セミナーや講演、企業へのコンサルティング業務などをおこなっている。